親が子供を殺したり、子供が親を殺したりというニュースが流れるようになり、人々はなすすべもなく手をこまねいています。人間がほかの動物よりも劣るようになりだしたのかもしれません。

 その大きな原因の1つは、躾が不十分であるということも考えられるのではないでしょうか。ペットでも躾をしなかったら、人間との共同生活は難しくなります。人間の場合は躾以外にもいくつか原因があるのかもしれませんが、しかしもし人間に躾をしないで、勝手に好きなことをさせて放ってしまったら、野獣のような、時には猛獣のような一面が出て来るのかもしれません。好きなことをさせることも必要ですが、ただ気ままにさせるだけで、もう出来上がってしまってからでは躾は困難です。 10倍も100倍もの苦労をしても逆効果になる場合もあります。

 小さい時が一番大切です。人間は生まれて50日までに親の愛情を十分に与えなかったらその子は一生満足ということを知らない人間になるといわれます。からかうと、はにかみやの子になり、励ますと自信のある子になり、好きにさせるとわがままな子になります。このわがままほど恐ろしいものはありません。それは自分の気持ちしか考えない人間が出来上がってしまうのですから、動物的になるということです。そこから野獣になってゆく人も生まれてくるのかもしれません。

 犬の躾をする時、好きな散歩から教えます。その時犬の方を見てはいけない、犬の好きな方に歩かせてはいけない、必ず反対方向に引っ張るのを繰り返すのが良いといわれます。そこに人間と犬との心からの融和が生まれて、楽しみは倍増します。

 今日、人間の躾を誰が教えているのでしょうか。家庭には家庭の躾が必要であり、会社には会社の躾が必要であり、国には国の躾が必要なのではないでしょうか。



 一流のレストランや一流のホテルで働く人は、厳しい躾を受けています。お客も働いている人が立派な人に見え、自分もマナーを守ろうと思い、恥ずかしいことはしなくなります。
 国が良くなるのもそんなところにあるのかもしれません。