人は親心によって育つ

 親は子供を育てるためには命がけになります。 子供のためだと思えば、どんな苦労も苦労だとは思いません。 そして子供の幸せが自分の一番の幸せだと思います。 一人前になると無関心を装いながら遠くから心配ばかりして見守っています。 子供に何か万一のことが起きた時は、全てを捨てて一番にかけつけます。

 親の気持ちが分からないのか、親の苦労が分からないのかといって叱る親は居ても、 それを本気で恩にきせる親はおりません。  親はどんなに子供のために尽くしても損をしたとは決して思いません。 それどころか、子供の為に犠牲になることによって、 これでいいのだという満足感さえ覚えるものです。

 親のそんな尊いまごころを見て大きな安心の中で育っていきます。 子供であってもそれが素晴らしいものであることに驚いて育つのかもしれません。 そして自分もそんなまごころを身につけていきます。

 人は生まれつき良心というものをもっているのか、 それともそんな親のまごころに接して良心が生まれてくるのかは分かりませんが、 そういう尊敬する心によって良心が育っていくことは確かです。

 「この親にしてこの子供あり」といわれるように親が立派であればあるほど、 それを子供が尊敬した分だけの良心が生まれ育つというものではないでしょうか。

 親が子供を大切に考えただけ、やがて子供が親を大切に考えるようになり、 情をかけただけ、やがて子供が親に情をかけてくるのは誠に不思議なことです。

 親心にまさるまごころはありません。それは天にも届くほどのまごころです。 そんな親心を他人にかけることができたら、かける人もかけられる人も どんなにか人間として成長もし、そしてまたどんなにか幸せになるのではないでしょうか。



 子供を育ててはじめて親の恩というものを知ります。 忘れていても潜在意識の中に残っています。 親の心は自分の中に生き続けています。 親心とは先の先まで心配する心です。 死んでもなお心配し続けているのではないでしょうか。