不安は必要なもの

 人間は老いや死の不安から逃れることは出来ません。
 
 愛する家族といつか必ず別れなければなりません。病気や事故や災難が来た時の保険はあっても来ないという保証はありません。仕事や運命が将来もともに、大丈夫であると安心することは出来ません。

 この世に生まれて来たかぎり、さまざまな不安と戦いながら人間は生きてゆかなければなりません。
 
 せめて子供にだけはと全ての不安から守ろうとする親があります。そんな子は過保護となり無気力かそれとも反対に怖いもの知らずの横着者になってしまいます。

 親と共に借金や病気の不安で中に生きて来た子は、たくましさと思いやりの深い子に育ちます。

 人が生きる上に不安ほど嫌なものはありません。しかし、もし不安がなければ人間は怠け者になってわがまま気ままが起きてくるのではないでしょうか。

 不安から逃れたいとか困りたくないと思うから、まっすぐに一生懸命に頑張ることが出来ます。

 怖いものが不安を与えてくれるから、その恐怖を克服しようとして人間は立派に生きることが出来、また幸せを築いてゆけるのではないでしょうか。

 むしろ自らすすんで恐怖の設定をすることが能力や才能を引き出す秘訣であるのかもしれません。

 不安から逃れたいと思うと強迫観念となって自分を襲って来ます。不安は人間には必要なものだと思って上手に付き合う生き方が人間の本当の生き方ではないでしょうか。



怖いものはお父さんでなければならないのではないでしょうか。もっと怖いものは大自然であり、運命であることを人間は知らなければいけないのではないでしょうか。