自分と他人

 人間は自分が一番かわいいものです。
 
 だから人はメリットがなければ付き合おうとはしません。
 
 そのメリットとは、欲と優越感を満たすことです。
 
 自由競争社会は文明をどんどん開いてゆきましたが、一方で自分と他人の区別を大きくして対立を深めたり、また、弱者を切り捨てたりすることを当たり前とする風潮も進んでいます。
 
 文明は生活を形の面では豊かにしましたが、精神面では人間関係を希薄にし、ストレスを増し、先進国ほど心の病気で苦しむ人が急増しています。
 
 それは家族ですらも、自分勝手なメリットばかりを追い求めるようになったからではないでしょうか。
 
 人類は未だその解決の道を知らないのが現実です。
 
 それを解決する方法は、そんなメリットを越える価値あるものを発見するしかありません。
 
 人間にとって最高に価値あるものは愛情ではないでしょうか。
 
 愛情の為なら、自分が犠牲になることも平気です。愛は自分が犠牲になることに幸せを感じるものでもあるからです。
 
 もし、天が人間に愛情という感情を授けていなかったならば、人間はメリットだけを追い求めてゆく怪物となってしまうのではないでしょうか。
 
 自己中心的であることほど恐ろしいものはありません。
 
 幸せとは自分が人よりも優越することであると思ったり、自分の欲望を満たすことであると思う人が最近多いということは、子供の頃に、そういう環境で育つことに原因があるのではないでしょうか。
 
 広く思いやりとしての愛情のかけ方や、愛情の受け方を教える愛情教育の研究が行われなければ、美しい愛情は育ちません。愛情の価値を今日誰が教えているのでしょうか。
 
 自分と他人の境をなくして、うちとけあって心の絆を強くしてゆくことが、これからの人類の一番必要なテーマなのではないでしょうか。



 物の豊かさに恵まれた先進国ほど、今心というものが失われつつあります。
 これを解決する道は、まず、あなた自身がそこに気づくことにあるのではないでしょうか。