ボスの座

 大統領や総理のイスを目指しての戦いや、ギャングのボスの座をめぐっての争いが常に行われています。

 ローマ帝国の崩壊も外からの攻撃によるものではなく、そうした内からによる崩壊でした。

 チンパンジーや猿などの少し賢い動物もボスの座をめぐって争いを起こします。

 ボスが弱くなると、ナンバーツーがボスの座を取って替わろうと攻撃に転じてきます。

 人間の場合も同じく、ボスが病気になったり、ボケたり、仏様の様にお人好しになるとねらわれてざわめきが始まります。

 一家の主人も、現役でお金を稼いでいる時は妻も子供も服従してくれますが、リストラや定年で失業すると妻達の逆襲が始まります。

 今まであんなにやさしかった妻が、化けの皮をはいだかのように子供達を味方に抱き込んで大きな態度にひょう変することがよくあります。

 驚いた夫は毎日強烈なストレスになやまされて、うつ病にかかっていろいろな病気が出てきます。定年後一年以内に圧倒的な数の人が死んでいるのは、「男にとって屈辱は死よりも辛い」という諺の意味するところでもあるのかもしれません。

 お金を一番稼ぐ人が一番幅をきかせるのが今の人間社会です。いつまでも現役で働き続けなければボスの座はなかなか守れません。妻が夫より稼いでいるところも妻がボスになります。

 これでは人間は動物と同じです。もっと人間の在り方を知る文化の遅れに早く気づかねばならないのではないでしょうか。


 自分の好きなようにやりたい、人から支配されたくないと誰もが思います。
 しかし、それだけではボスになる資格はありません。
 ボスの資格は、賢さとやさしさと強さ、つまり「知、仁、勇」を持つことではないでしょうか。