「気の使い方」

 おいしい料理とは、食べる時もおいしいけれど、後味がとても良いものです。  そして、料理人のにおいも無ければ、癖や形も見えません。  料理人が自分を無にして、陰で時間をかけて、喜び勇んで作ってくれています。 それを感じさせないのが、良いのではないでしょうか。  上手な気の使い方も、相手に気付かれないように、陰で苦労をして、さりげなく尽くすことです。  やってあげるという高い心ではなく、させて頂くという低い優しい心で、 尽くしてくれるものではないでしょうか。  喜んで頂きたい、という誠の心が伝わって来なければ、本物とはいえません。  「角ためて牛を殺す」という言葉がありますが、あまり丁寧すぎると、 本末転倒になることがよくあります。  自己満足の丁寧さほど、馬鹿げたことはありません。  相手にどれだけの満足を与えられるかということを、気づかれないように、 さりげなく、恩着せがましくならないように、配慮しなければなりません。  上手な気の使い方、その人の人間性や、教養が出ます。  上手な気の使い方は、人間の美学であり、人間の誠の姿なのではないでしょうか。 English Italiano Francais Chinese